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「いやあ、よう来なはった」
「あ、はじめまして、中之島ケンタと申します。」
「いつもいつもジュンがお世話になっております」
「いえ、こちらこそ」
「まあまあ、上がりなさって」
「はい、お邪魔します」

品の良いご夫婦である。

役所に勤務されていたと聞いていた。

「まあ、ごゆるりと」
「お足をおくずしになって」
「すみません。では、お言葉に甘えて。」

テーブルにはご馳走が並んでいる。
オレは好物のめはり寿司に夢中だ。
もちろん、魚も美味い。
酒は「黒牛」だ。
やや辛口に先調子の旨口である。

お父さんもイケるクチのようで酒が進む。
ジュンの子供の頃の話、親戚の話、和歌山の話し。
上善の酒は人を饒舌にさせるようだ。

「ジュンは子供の頃から泣き虫でなあ・・・」
「やめてよ、お父さん」
「ええやないか、なあ、ケンタさん。」
「はい。」
「なんかあるといつもピーピー泣きようさかい、近所ではピーちゃんなんて言われてなあ。」
「ピーちゃんですか~、今も変わってないみたいですよ。」
「うそだよ~!うそうそ!」
「ハハハハ、やっぱりか、ご迷惑かけてるんじゃないのか?」
「そんなことありませんよ!」
「まあ、ワタシもそんなこの子が北海道へ就職して、やっていけるのかと思いましたが、あなたのような先輩がおられてワタシも安心ですわ。」
「もう21だよ、ボクも」
「う~ん、いつまでたっても子供は子供じゃからなあ、心配はするもんじゃ、親っちゅうのは。なあ。お母さん」
「ほんまやねえ、もうちいとシャンとせな、なあ男の子なんやから。」

久しぶりの家族の団欒は遅くまで続いていた。
楽しい夜だった。

翌日も快晴だった。
なにも心配なんか無いような青空だった。

朝食を済ませ、ご両親に挨拶を済ませると良い時間になった。
母親はお土産を山のように持たせた。
父親は「ジュンをヨロシク」と何度も言っていた。


「おとうさんは酒豪なんだなあ、いささかオレも二日酔い気味だ」
「かなり強いよ、町ではお父さんに勝てる人はいなかっって」
「ゲッ、そんな人と飲んだのか・・・」

やがて、クルマは高速道路に入ろうとICに進入する。

「でも、やっぱり言えなかったね、ボクタチのこと。」
「そうだな」
「そうだよね、言えるわけが無いよね。」
「ゴメンな、もう少しオレに勇気があれば・・・」
「違うよ、そんなこと勇気とかそんなことで言えることじゃないから、気にしないでよ。」
「うん、でもなあ・・・。」
「でも、嬉しかった。ちゃんとお父さん達と会ってくれてさ。」
「うん・・。」
「それで充分だよ。」
「うん・・・。」


空はまだ青い。
雲ひとつ無い青空だ。
日の光がやけに眩しい。
その眩しさが今のオレには苛立たしい。

男と女の愛が光なら、その他の愛は影なのか。
人は光に顔を向けるが、影には顔を背ける。
影の闇に怯えるように。

オレは闇などは恐れない。
たとえ、この国では報われない愛だとしても、オレはジュンを守り抜いていく。
世の中に光と影が必ずあるのなら、オレは影を見詰めていくのだ。
その影で楽しめるだけの戯画を描いていこう。
影でさえも光に変えるために。

それはまるであのフェルメールの絵のように。


(終了)
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